通信技術やディジタル技術の進展により,さまざまな情報のディジタル化が進み,変電所内における
機器状態の情報取得やそれらを活用した新しい運用・保守が模索されている。さらに,変電所の監視制
御・保護リレーシステムにおける通信・制御保護機能・エンジニアリングなどを対象とした国際規格で
あるIEC 61850 が整備され,これに準拠し,制御や保護機能が具備された高機能汎用型ディジタルリレ
ー( Intelligent Electronic Device:IED )を導入したディジタル変電所の監視制御・保護リレーシステム
について,海外において導入が進み国際会議などで議論されている状況にある。
そこで,ディジタル変電所の監視制御・保護リレーシステムの向かうべき方向性を探るべく,国際規
格適用およびフルディジタル化における課題の共有化を図ると共に,今後の方向性についてまとめるこ
ととする。
本報告書は,七つの章にて構成されている。第1 章では,本専門委員会の設立経緯,研究対象範囲,
調査・検討概要などを記載した。第2 章では,変電所監視制御・保護リレーシステムの概要を説明し,
各社が採用してきた監視制御・保護リレーシステムについて現状までの変遷を述べた後,IEC 61850 を
適用した監視制御・保護リレーシステムに期待することについて整理した。第3 章では,IEC 61850 が
発行されるまでの歴史について紹介すると共に,相互運用性を確保するために必要なデータモデル,通
信サービス,システム構成記述言語について具体的に紹介する。第4 章では,第3 章で紹介したIEC
61850 を適用したディジタル変電所やフルディジタル変電所の構成について紹介し,これらを設計する
ために必要な,ネットワーク構成,冗長化方式,時刻同期について紹介する。第5 章では,ステーショ
ンバスを適用した監視制御・保護リレーシステムに着目し,構築するうえでの課題や方策を記載すると
ともに,国内外での導入状況について説明する。第6 章では,プロセスバスを適用した監視制御・保護
リレーシステムに着目し,構築するうえでの課題や方策を紹介する。第7 章では,今後変わりゆく監視
制御・保護リレーシステムの将来像について提言をまとめた。