架空送電設備の絶縁設計にあたっては,内部過電圧,雷,塩じん害,風による電線・がいし連の横振れ,着氷雪による電線弛度の増加,着氷雪脱落による電線の跳ね上がり,ギャロッピング現象による電線振動などさまざまな観点を勘案し,がいし個数,電線と支持物との間隔,電線相互の間隔など協調のとれたものにする必要がある。これらの架空送電設備の絶縁設計に関連する内容は,電気協同研究 第 1 巻第 1 号「閃絡事故防止専門委員会報告」1944(S19)年以降,電気協同研究や電気学会技術報告などで検討され,とりまとめられてきた。
架空送電設備の絶縁設計に関しては,電気学会技術報告(Ⅰ部)第 76 号「架空送電線路の絶縁設計要綱」が 1966(S41)年に,電気学会技術報告(Ⅱ部)第 220 号「架空送電線路の絶縁設計要綱」が 1986(S61)年にまとめられている。現在でも,国内の多くの送配電事業者がこの絶縁設計要綱に基づいた絶縁設計を実施している。
電気協同研究としては,送変電設備の絶縁設計に関して 500 kV 系統および 275 kV 系統を中心に,絶縁設計合理化方策とコストダウン効果などを体系的に検討し,電気協同研究 第 44 巻第 3 号「絶縁設計の合理化」を 1988(S63)年に発刊している。
この「絶縁設計の合理化」の発刊以降,30 年以上が経過した。この間の新たな知見や解析技術の進歩を踏まえた最新の絶縁設計技術をとりまとめ,将来の設備形成における設計の高度化や合理化に向けた方向性を示すことを目的に,2020 年 10 月に「架空送電設備の絶縁設計調査専門委員会」が設立された。
この 30 年の間に,UHV 送電設備の建設,ポリマーがいしや送電用避雷装置の適用,ギャロッピングなどの電線振動や地震に対する設備対策など,新しい技術や知見が蓄積されてきている。
今回,これらの調査を実施するとともに,国内の絶縁に関する設備実態についても整理を行った。あわせて国内の絶縁設計の参考とするため,海外の絶縁設計に関する文献調査も行った。本調査は,コロナウィルスの蔓延により行動制限が求められる期間中と重なったが,作業会組織を中心に精力的に調査を実施し,委員会においてその内容を議論し報告書としてまとめたものである。今回の調査では,十分に調査ができなかった点については,絶縁設計技術の方向性と今後の展望の中でふれることとして次世代への課題とさせていただいた。
国内の架空送電設備の多くは,高経年化が進みつつあり,なんらかの設備改修が必要な時代になりつつある。次世代の設備形成の際に,本研究調査の知見が,信頼性と経済性を兼ね備えた合理的な絶縁設計の一助となることを願っている。
【ご注意】
CD-ROMをご覧になるにはアドビ社のAdobe Acrobat Readerが必要です。アドビ社より無料で配布されておりますので,ダウンロードしてご利用ください。他のPDF閲覧ソフト(編集可能なAcrobatを含む)ではご利用いただけません。