本報告書は、平成30年10月31日に標記のテーマで行われた講演とパネルディスカッションの内容を取りまとめたものです。
電気は貯蔵できない商材であり、発電量と使用量を常に一致させて系統周波数を維持する必要があることを前提に、電源と需要の規模・立地に応じた電力系統が形成され、運用されてきました。
近年、再生可能エネルギーが急速に普及していく中、太陽光発電や風力発電といった自然由来の発電方式では、特に昼間の余剰電力の課題が顕在化しており、「蓄電」はその課題解決の有力な技術領域として、注目を集めています。また国外においても、欧米諸国を中心に蓄電池向けの政策が導入されるなど、「蓄電」への期待が高まっています。
蓄電技術の活用においては、蓄電池の大容量化・小型化を背景に、ハイブリッドカーに代表される蓄電池搭載自動車や電気自動車(EV)が普及しつつあります。また、水素エネルギー利用拡大の研究も進められていますが、電気により水素を生成し、水素を燃料として発電する形態などは一種の蓄電技術と見なすことができます。これら蓄電技術の進歩により、系統に接続する複数の蓄電池を統合制御し、1つの発電所のように機能させるバーチャルパワープラント(VPP)など、新たな技術への発展が期待されており、様々な活用研究が進められています。
蓄電技術の発展は、充電ステーションや水素生成施設の普及による電力需要喚起につながる可能性がある一方、電力の地産地消を促進し電力系統利用率を低下させる要因にもなり得ます。そこで、蓄電技術の最新動向について紹介するとともに、電力事業への影響と求められる対応について展望し、意見交換を行いました。