1970 年代後半~1990 年代前半の安定成長期に系統拡充や信頼度向上策によって,大量に導入されてきたガス絶縁開閉装置(以下GIS と略す)は,開発されてから40 年あまりが経過し,高経年期を迎える中,安定成長期から低成長期への移行とともに,電力自由化の進展が図られてきており,社会インフラとしての役割から,安定供給に向け万全を図るとともに,徹底したコスト低減が求められている。
このような状況下,使用者および製造者では,機器の寿命推定のための劣化調査が進められており,一部では劣化進展に伴う更新も行われている。
今後は,更新による工事物量増大への対応と作業停止制約の中で更新対応を順次進める必要があることから,延命化もしくは更新を判断するための劣化評価に関する知見が必要である。
そこで,今回の電気協同研究ではこれらの背景を踏まえ,最新の障害内容,劣化評価に関する知見および情報を収集し,劣化メカニズムとその評価を行い,延命化および更新の考え方構築に向けた研究を行った。
【主な記載内容】
第Ⅰ編に「総説」としてまとめを述べ,第Ⅱ編「現状調査」では,設備量の推移,事故・障害の傾向分析,劣化調査状況の傾向,最新の劣化診断技術や判定値および設計・製造・保全面での寿命に関する調査結果について述べている。
第Ⅲ編「GIS の劣化事象と保全方策」では,初期形GIS の構造的特徴や変遷をとりまとめ,初期形GIS を中心として抽出した特徴的な劣化事象に対しての保全方策を提案した。さらには,GIS の寿命を決定づける部位の劣化に対しては,劣化要因による影響の分析を踏まえ,全国大のフィールドデータ分析から現状における劣化評価を行った結果を述べている。
第Ⅳ編「GIS の延命化および更新の考え方」では,これまでにGIS の延命化および更新に至った実態を調査した結果を参考にして,劣化に対する延命化および更新の考え方の概略フローを取りまとめた。さらには,将来的に増加していく高経年GIS の設備量を踏まえ,優先順位づけが可能な評価表の提案を行い,更新時の配慮事項も含めて,更新判断に資する評価項目を取りまとめた結果を述べている。
第Ⅴ編「劣化データの蓄積」では,現状の課題と今後も継続して蓄積が必要な対象および評価項目,劣化要因分析に必要な諸元データを取りまとめ,提言した。
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