近年,山間部や都心部に設置される大容量変圧器は,輸送制約や周辺の環境変化から輸送質量を軽減するため,分割して輸送する変圧器の適用が増えております。また,高経年変圧器の延命化に対する要求の高まりから,現地でのオーバーホールを実施する使用者も増えてきております。このように現地作業を伴う変圧器の適用が今後も増える可能性があることから,分解輸送変圧器,特別三相変圧器やオーバーホールに関する現地作業基準を明確にすることで,品質の維持・向上および,現地作業の効率化,現地試験の合理化に取り組む必要が生じてきました。
このような背景から,電気協同研究会は「電力用変圧器の分解輸送・現地作業品質管理基準専門委員会」を設置し,約3年間にわたる調査研究を進めて参りました。
本書は,その研究成果をとりまとめたもので,油入変圧器輸送に関する環境変化,分解輸送変圧器,特別三相変圧器の品質確保に関する技術変遷と適用経緯等がとりまとめられています。そして分解輸送変圧器,特別三相変圧器,オーバーホールについて品質管理の実態を把握したうえで,統一規定した現地作業基準が示されております。さらに分解輸送変圧器,特別三相変圧器の現地試験合理化のために最低限厳守すべき管理項目と品質管理基準を規定することにより,現地試験合理化の提言が行われております。
特に本書は,変圧器の現地施工品質の確保に携わる実務者の疑問に応えられるよう,現地作業基準,現地試験合理化のための品質管理基準策定における背景や,根拠の明確化等に配慮してとりまとめられており,電力会社や特別高圧受電設備をお持ちの関係者の方々をはじめ,電気技術者や電気技術者を目指す方々にまで広くご活用いただけるものと確信しております。より多くの皆様からのお申し込みをお待ちしております。