電力用変圧器改修ガイドライン 概要 高度経済成長期に大量に設置された電力用機器が高経年期を迎える中,電力の安定供給のため,機器の状態を適切に判断することが必要となる。また,電力自由化に伴い電力流通部門における公平性・透明性を高めるため,投資に伴う合理的な判断が求められている。 このような状況下,変電設備の事故・障害は電力供給支障につながることから,適切な判断により適切な時期に改修を行っていく必要がある。そこで,本研究では事故・障害発生時の社会的影響が大きい電力用変圧器に焦点を当て,技術面のみならず,運用面のリスクなどを総合的に評価し,改修にあたり考慮すべき事項・課題を明らかにし,変圧器の改修策立案に資するガイドラインの策定について研究を行った。 第Ⅰ編に「総説」としてまとめを述べ,第Ⅱ編「油中ガス分析による保守管理」では,油中ガス分析による内部異常の判定と診断を用いた保守管理について述べている。判定基準は従来と同一であるが,診断法としての「ガスパターン診断表」と「特定ガス診断」を充実し,「等価過熱面積診断」,「トレンド診断」,「線形判別式診断」を考案し,新たな評価方法として提案した。 第Ⅲ編「流動帯電に関する保守管理」では,主に高経年器の流動帯電に対する保守管理について述べている。絶縁油と絶縁物の相互作用による高帯電度化を把握するため,油中硫黄成分と帯電度との関係を整理するとともに,「蓄積電荷密度測定法」を考案し,各種の実験や,各電力が保有する変圧器の絶縁油調査結果に基づき,新たな保守管理方法を提案した。 第Ⅳ編の「事故障害発生時の影響評価」では,主に経年や発生ガスによる事故発生確率を想定し,変圧器事故が電力系統に及ぼす影響を評価することも改修計画立案時に考慮すべき事項であることを述べている。 最後の第Ⅴ編では,第Ⅱ編~第Ⅳ編を総括するとともに,継続使用可否判断や改修優先順位付与など,その他考慮すべき事項をとりまとめ,電力用変圧器改修の基本的な考え方のフローを提案している。