保護リレーの新しい機能・性能 概要 近年,既設系統への分散型電源の連系,送電線や遮断器といった主回路を合理化した系統の増加,都市部を中心としたケーブル系の増加などにより,系統保護面で新たな課題が生じている。こうした課題に対応して,従来のディジタルリレーをベースとして新しい原理・方式の保護リレーシステムが開発されてきた。 また,情報伝送や演算処理技術の目覚ましい進展により,ディジタルリレーの機能・性能が向上しているが,一方で改廃サイクルの短い電子部品で構成されていることに起因した保守部品の枯渇などの新たな問題も顕在化しつつある。 このような状況を踏まえ,保護リレーの機能・性能および運用・保守性の向上,ならびに技術者育成への寄与を目的として,保護リレーの現在の実態および今後のあり方などについて,とりまとめた。 本報告書は,7つの章により構成され,第1章では本調査専門委員会の目的と調査結果の概要をまとめた。第2章では,ディジタルリレーの開発初期から今日に至るまでの変遷,および,現在のディジタルリレーのスペック・適用実態・信頼性実態を記載した。 第3章では,近年の系統保護面における課題と,これを克服するための新たな保護方式を整理した。第4章では,生産中止機種を保全していくうえでの課題と対応方法,ヒューマンインタフェース用のパソコンに関する課題と対応方法を示した。 第5章では,今後保護リレーシステムに適用が期待される,ディジタル素子技術,通信伝送技術,センサ・I/O技術,および,ソフトウェア技術についてまとめた。第6章では,今後数年程度で実現できるであろう保護リレーの信頼度向上策,機能向上策,および,生産中止機種の保全策を提案した。第7章では,中長期的な観点から将来の保護リレーシステムを展望した。